2012年8月19日日曜日

イラン行き三日目 テヘランからシーラーズへ

 今朝は朝一番にホテルのカフェに行って朝食を取る。7時ちょうどを過ぎて準備中だったが入っていいみたいだったので、ホテルの客で一番早い朝食を取る。メニューは鶏肉のハム、ゆで卵、炒り卵、チーズ、きゅうり、トマトとハルバ。それにナンが柔らかいのと硬いのの二つあった。

 ナンに生クリームとチェリーのジャムをつけて食べたらとても美味しかったので、そればかり食べてお腹いっぱいになった。朝からカロリーをとってしまった。

チーズ、ハム、ナン、トマト、キュウリ、ハルバ、ホットミルクの朝食

堅いナンがまたうまい

 街歩きをして銀行で両替をし、旅行代理店ですべての旅程を確定させるのが本日の仕事だ。近場の旅行代理店の場所を聞く。カウンターのお姉さんは

「今日は休み、ほら・・・」
「エイド・アル・フィトゥル?」
「そうそう。だからどこもやってない」

悲しい事実をお告げになさる。チェックアウトは2時。あと5時間だ。なんとかなるはず、というかなんとかしないといけない。店のやってないテヘランにいても仕方ない。1泊100ドルが飛んでいくのも我慢ならない。

 ホテルを出て右側に歩く。特にあてがあるわけでもない。地図での場所すら分からない。ロンリープラネットは大雑把な地図しかなくて、大雑把な人向けだ。とりあえず米ドルを携えていることと、歩いて行った範囲は歩いて帰れるであろう見立てていた。それよりなにより、左より右の方が道が真っ直ぐで歩きやすそう(=迷わなさそう)だったからだ。

 歩いていたらイラン人のおじさんに話しかけられた。なんでイラン人は僕にペルシャ語で話しかけてくるのだろう。今日はどこもおやすみ、どこから来た、日本からか、それは良い、それは良い。アメリカ大使館知っているか、知ってるか。ここから歩いて100歩も行けばアメリカ大使館だ。見ていくといい。何、礼には及ばないよ。



アメリカ大使館周辺

イランの野良猫。ペルシャ猫じゃなかった!

テレガニ駅前にあるアメリカ大使館の正門

 いいことを聞いた。どうもこのへんは警官が多いな、と思っていたら、あのアメリカ大使館人質事件があったあの現場がここなのか。確かに100歩とは言わないまでも、もう少し行ったところにDOWN WITH USAと書かれた石碑(?)があった。そして目の前には地下鉄テレガニ駅。乗ってテヘラン駅に行って、列車の切符でも買うか。と、ロンリープラネットを開けていたら、道行く人が「何かお困りで?」と助け舟を出してくれた。甘えることにする。ここでバスを乗り換えて、終着駅がテヘラン駅だ、と言われた。ありがとうございます。

 それはそうとこんな時はまず遠いところから攻めるのが定石だ。交通機関で一番遠いところとなると、見当たるのはメヘラバード空港(国内線)だ。そこまで行こう。幸い地下鉄は祝日だからか、無料開放されていた。ありがたいけど、小銭が欲しかった。

テヘランメトロ

 地下鉄4号線に乗っていけばいいようだ。1号線からイマーム・ホメイニー駅で2号線に乗り換えて、アザディ駅に行けば乗り換えられるようなので、行ってみた。が、駅前は見事に何もない。大きな道路が通っていて、モスクがあるだけだ。踵を返して駅員に聞いたところ、来た路線を戻ってイマーム・ホメイニー駅の三つ向こうにあるダルバゼ・シェミラン駅で乗り換えないとダメらしい。駅員さんが託けてくれた乗客のお兄さんも丁寧に教えてくれた。ありがたい。

 どうにか1時間ほどかけて、最寄駅(と言われた)メイダーネ・アザディ駅についた。アザディタワーの目の前だ。かっこいいので写真を撮りつつ、タクシーを探す。タクシーはなかなか見つからない。写真を撮ってキョロキョロしていたら、警備の警官に呼び止められた。すると、割って入った運転手のおじさん、日本語がペラペラで「この人は日本人だから何もわかってないんだ、空港に行きたいだけなんだ」とペルシャ語で弁解してくれたっぽい。

 おじさんは20年前に日本から帰ってきたらしい。3回日本にいて、1回目は10年、2回目は3年半、3回目は1年と。山形、北海道、六本木で仕事をしたと言っていた。だから日本語がペラペラなのか。それよりも20年も忘れなかったのがすごい。南洋や台湾でお年寄りと日本語で話したけれど、なんでこういう人たちの日本語はずっと記憶に残っているんだろう。

 乗合タクシーのようで、空港に行く人をあと3人捕まえたら出発する、1万リアルだ、と言われた。大体1ドルぐらい。しばらくしたらカップルが見つかって、その人たちと一緒に行くことに。運転手のおじさん曰く

「この人たちは空港にいかない。別のところに行くから、あなた空港でおろしてあげる。お金はいらない」

ということで、車で2分ほど走ったところにある空港との分岐でおろしてくれた。本当にタダだった。ありがたい。優しさに心を打たれて、イランが好きになる。



このバスを撮った直後に呼び止められた

 空港までは20分ほど歩いた。たいへん疲れた。ターミナル2に行ってみたけれど、建物は綺麗なのに閑散としていた。イラン航空しかないようだし、とりあえずもう一つの方にも行ってみた。また15分ほど歩いてターミナル4に到着すると、建物は汚いものの人でごった返していた。ここではチケットも買えるだろう。世界で最後のB707ユーザーと噂のSAHA AIRもあった。しかしSAHAはマシャド行しか扱ってないみたいで、シーラーズ行は別の航空会社だった。発券されたのはイラン航空のチケット。

イラン航空本社前

なぜか地図が日本語(「チャド」)


メヘラバード空港のターミナル
販売所のお姉さんにシーラーズ行きはいつの便があっていくらか聞いた。5時の便が762,000リアルらしい。60ドルほどだ。米ドルで買おうとしたら、イランリアルしかだめだという。両替をしようとインフォメーションに行くけども、両替所はないという。さすが国内線ターミナル…一応国際線も扱っているはずなのに。もう一度販売所のお姉さんに、予約だけして、お金を払って発券するのは不可能か聞いてみたけども、無理と言われた。ままよ、仕方がない。ホテルに取って返して、もう一度来よう。

 タクシーでメイダーネ・アザディ駅まで連れて行ってもらう。7万リアル。アザディ・タワーの近くで下ろされたので、写真を撮りながら移動したら、警官にちょっと怒られた。あっちに行け、と言われたのでおとなしく辞去する。軍隊の詰所があるからかな。またバスターミナルに戻って、小さいバスの写真を撮ろうとしたら、警備の人にカメラを取り上げられた。写真を撮ってくれるのかと思い、遠慮をしていたら、バイクに乗った人にカメラを渡した。いや、ちょっと待て。一体何をするんだ、と英語でまくし立てると、相手はペルシャ語しかできないようで、「ノーキャメラ!」と言われた。オーケーオーケー、ソーリーソーリーと謝って、カメラを回収し、メトロ駅から去っていった。撮影したらいけない基準がわからないけど、官憲のいるところで撮影したらだめということだろう。ここに来て、あの日本語が話せたタクシーの運転手さんは僕を助けてくれたんだと知る。とてもいい人だったんだ。

こんなかっこいいアザディ・タワーの写真を撮っていただけなのに

 ホテルに取って返してシャワーを浴び、とりあえずシーラーズのホテルを電話で予約した。チェックアウトと両替をして、タクシーも頼んだ。両替はUSD1=18,000IRRだった。空港より1.5倍もレートがいい。去年末は10,300IRRぐらいだったというから、これはいよいよやばい暴落っぷりだと思う。

 ホテルの人が呼んでくれたタクシーでテヘラン・メヘラバード空港へ。タクシーの運転手さんは、前の政府は良かったけど、今の政府は…と不満を口にしていた。しかしイランの政府は、中東でもかなり珍しい、民主主義に則った選挙で選ばれているのだ。民意なの…だろう。

 空港ではさっきのお姉さんのいる販売所へ。

「一体何しにきたの?」

と言われた。お金を用意してきたんだ、と言ってチケットを売ってもらった。無事に午後5時のフライトに乗れることとなり、シーラーズに行くことができそうだ。

 762,000IRRだったので、1,000,000IRRを払ったものの、40,000IRRしかお釣りをもらえなかった。ゴネたら、後ろに並んでいたおじさんも一緒に計算し始めて、いいかよく聞くんだ、こういう計算になっている…と説明し始めたところでお姉さんが気づいたらしく、もう200,000IRRのお釣りをくれた。

「ごめんなさい、疲れているの」
「いや、こちらこそ手間取らせてすまなかった」

あくまでも、僕は紳士だ。

 ターミナル4でチケットを買ったのに、出発はターミナル2かららしい。さっき後ろに並んでいたおじさんが教えてくれた。イランの人は親切だ。時間もあるから歩いてターミナル2に行く。

 おとなしく写真も撮らず、ブラブラして、お昼を食べてないことに気づき、多分乾燥しているから気づかないだけで汗をかいているだろうから、水分補給を兼ねてファンタを買って飲んだ。ケミカルな味が体に行き渡った。

写真撮影恐怖症になってこんなのしか撮ってない(メヘラバード空港)

 定刻5時の30分前になってゲートが開き、6番から出発。バスに乗ってタラップ搭乗らしい。すわB727か、と思ったが、何のことはないA320だった。バスからSAHA AIRのB707が見えた。思ったより背の低い、小さい飛行機だった。小さなエンジンが四つついている。A340とは比べ物にならないぐらい小さい。

 実はこの時、日本から持ってきたケータイの電池のふたを落としたので、一度ゲートに取って返した。その場にいたお兄さんに事情を告げて、ゲート周辺を探した。だけど見つからなかった。別に電池は使えるし、まあいいかと思ってゲートを出ようとすると

「君、さっきあっちの遠い方まで行っていたよね、探してきたらいいよ」

と言われる。お言葉に甘えて探させてもらったけど、もしかしてずっと見られてたの?

 妙にガタガタとうるさい飛行機は、定刻通りテヘラン・メヘラバード空港を出発した。出発時には軍の輸送機も見えた。官民共用らしい。この飛行機は壁の固有周波数とエンジンの音と周波数が合うようだ。ブルブル震える。搭乗時に500mlの水をもらい、フライト中には軽食も出て、さすが国営航空と思わせる充実っぷりだ。1時間半のフライトの後、砂漠の中のシーラーズに飛行機は着陸した。IL-72がいくつか止まっていた。


シーラーズ空港を離陸するイラン・アーセマン航空のA340。周りの人も撮影していたから大丈夫。


 空港から予約したホテルまではタクシーで移動。600,000IRR。無事予約も入っていたようで、チェックインして街をぶらつく。と言っても夕暮れ時だし、ご飯を食べるぐらいのつもりで100mぐらいの範囲を歩いた。本屋で絵葉書を買った。「こういうのはどう?」と言われて詩の本を示された。対訳本だったし、52,000IRR程度だったので買った。こうやって相手のほしそうな本を勧められるのは、やり手の本屋だと思った。


シーラーズのホテルから
その道をまたちょっと歩いたら、ちょうどチキンのローストのお店を見つけたので入った。英語のできるおじさんが店主だったので、安心してチキン1匹を頼んだ。飲み物はヨーグルトにした。話に聞いていたけどすっかり忘れていた、塩味のヨーグルトドリンクだった。なんというか、さっぱりした味だ。歯磨き粉を連想するのは、僕だけではないと思う

 鶏肉は結局1匹頼んだけど半分を残してお持ち帰りに。1,200,000IRRなので8~10ドルぐらいか。メキシコで食べたPolloの方が美味しいし安かったと思う。メキシコではとうもろこしの味のするトルティーヤがついてきたけど、イランではナンがついてきた。味はやっぱり、鶏肉を焼いた味だった。


おいしい鶏肉。すごいボリューム。


近くのショッピングモールにあったシャンデリア。きれい。
 

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